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百物語ですね。それでは、初投稿させていただきます

す・き・ま

都内にある少々古めのアパート。そこの一室が、舞台となります・・・・。

某月某日、ここに一人の人間が引っ越してきた。名前はKさん(仮名)。不動産屋に行き、此処を求め、この話の新たな犠牲者として名を連ねる者・・・。
「此処はやめたほうがいいと思うよ。アタシも何度か来た人を見たがね、皆消えちまうんだよ。」
「ははっ。単なる噂話じゃないですか。なに、僕は大丈夫ですよ。それに、此処しかいい部屋がなかったんですよ。」
会話をするのは、大家さんとKさん。手には引越しするものにありきたりな、大きなダンボールや、バッグ。舞台は・・間近。
ガチャ
「・・・・・・っ・・・・・・」
絶句
「誰が来ても、結局は、部屋はこんな感じで・・・。何か理由があるのかと思って、来た人の判断に任せているんですよ・・。」
「だ、大丈夫ですよ。すぐ片付きますから。もういいですよ。」
「本当ですか・・?何かあったら必ず言ってくださいね。」
ぱたん・・・と、荷物を運び込み、大家さんは去っていった。
赤・・赤、あか、アカ・・・・・。
部屋には、赤いガムテープが張られていた。少し、などというものではない。目張りするかのように、隙間と言う隙間、継ぎ目と言う継ぎ目にテープは張られていた。
「さて・・・・片付けるか・・・・・・。」
荷物はそのまま、Kさんはテープをはがしにかかった。

どれくらい立っただろうか。此処についたのは、夕方より前だった。が、テープの量が多く、今は、夜。
「ふう・・・・・さて・・・と、」
Kさんは、翌日の仕事の分だけでも・・とスーツケースからノートパソコンを取り出し、机に向かった。机は備え付けてあったもので、木造の、年季が入ったものである。

・・・・・・・かり・・・・・・
「ん・・?」
十分くらいたった頃だろうか、Kさんは異変に気づいた。
・・かり・・・・・・・・・・かり・・かり・・・
引っかくような音が聞こえる・・・。どこから・・?
・・・・・くす・・・・・・・・くすくす・・・
笑い声まで聞こえる・・。ドコカラ・・・・?
・・・・・・・・・・・・・・・
視線を感じる・・・。何処から・・・?
す・き・ま・だ・・・・・・・・・・。
どうする・・如何する如何する如何するどうするどうする・・!!
くすくす・・・・・・・・・かり・・・・かりかり・・
机の引き出しを開ける。
一つ目、何も無い。 二つ目、何も無い。 三つ目・・・あった・・・。
赤い、ガムテープ。
急げ、急げ急げ急げいそげいそげいそげ・・!!
Kさんはガムテープを?み、塞ぎに係った。
隙間という隙間、継ぎ目という継ぎ目。
そこの住人が、かつてしていたように。

どれくらい立っただろうか。まだ、外は、暗い。
あれから、Kさんは、この部屋の隙間を、継ぎ目を埋めた。部屋は・・・赤い。
ふ、と目を上げる。そこは、三つ目の引き出し。ガムテープがあった場所。ほんの少しだけ引き出されていて・・・まだ、張っていない。
ゆっくりと、近づく。
がっ!
「・・・・・・・・!!」
手。引き出しから・・・白い、手・・・・。
抗えない
力が、強い
・・・・・・・くすくす・・・・・・・・
隙間ガ、嘲笑ッタ    
オ・イ・デ・・・・

「あらあら・・・・・またかねぇ・・。何も言わず行っちゃうなんて・・」
次の日、大家さんが見たのは、
赤い部屋。持ち主が去った部屋。


物事の渦中に自分が居ても、自分だけは大丈夫等と思ってはいけない。
貴方も、渦中に飲み込まれた人々の一人になってしまうのだから・・。

      ・・くすくす・・・・・・・くすくす・・・・・
        ホラ、貴方ノ周リノ、ナニカガワラウ